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口腔ケアで改善する嚥下機能(2)
[公開日:2023/1/30 /最終更新日: 2023/1/30 ]口腔ケアは、口腔内の衛生状態を改善させるとともに
お口本来の機能も改善させることが分かっています。
口腔ケアが嚥下訓練の一種であることは、
「要介護高齢者に対するリハビリとは」でも紹介いたしました。
では、今回は口腔ケアが実際にどのような嚥下訓練となり、
何が期待できるのかを2回に分けてご紹介いたします。DOCTOR’S PROFILE
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東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 医歯学専攻
老化制御学講座 摂食嚥下リハビリテーション学分野助教・教授(診療科長)
なかね あやこ
中根 綾子先生
とはら はるか
戸原 玄先生
口腔ケアで「咽頭(のど)の感覚」を改善させましょう
前回のコラムでは、嚥下(のみこみ)には「飲み込む力」と「食物などを感じる咽頭(のど)の感覚」が非常に重要な要素であることを紹介いたしました。今回のコラムでは「咽頭(のど)の感覚」を改善させる方法についてご説明いたします。
「咽頭(のど)の感覚」を改善させる方法
咽頭(のど)の感覚を改善させる方法として主に①口唇や舌・頬の訓練、②のどのアイスマッサージ、③口腔ケアの3つの方法があります。
「要介護高齢者に対するリハビリとは」にも記載されている①口唇や舌・頬の訓練は、主にお口の中の感覚低下を予防します。また、歯肉マッサージは指で前歯から奥歯の方向にリズミカルに歯肉をマッサージする方法で、お口の中の感覚を高め、唾液の分泌を促し、嚥下(のみこみ)を誘発させます。
その際に口腔ケア用のジェルを用いると、滑りも良くなり痛みを感じにくくなります。また、風味や味があるジェルを使用することで嚥下(のみこみ)を誘発しやすくなるため、より効果的でしょう。
②のどのアイスマッサージは、凍らせた綿棒を水で濡らして軽く絞ってから、舌や上あごなどを軽くなでたり押したりして、マッサージ効果により嚥下(のみこみ)を誘発させます。
③口腔ケアは、施設に入所されている方を対象とした研究調査で、毎食後5分間のブラッシングと歯科医師または歯科衛生士による週1回の入念な口腔ケアを行うことで、約30日後にはサブスタンスPという知覚神経に働きかける物質が増加し、嚥下(のみこみ)の起こる速さが速くなると科学的に証明されています。
もし前回のコラムのような特別な嚥下訓練が様々な理由で実施できない方でも、口腔ケアをしっかり行うことで「咽頭(のど)の感覚」が改善し、それに伴って嚥下機能の改善も期待することが可能です。
さらに、嚥下訓練と少し話は逸れますが、口腔内の細菌がインフルエンザウイルスの感染や発症そのものを手助けすることが分かっています。口腔ケアを行い口腔内の衛生状態を保つことで口腔内の細菌の減少を図ることができ、インフルエンザの予防にも効果があることが証明されています。
普段はセルフケアや介護者が口腔ケアを行い、定期的に歯科医師や歯科衛生士のアドバイスを受けるとより効果的です。クリニックの受診が困難な方には、訪問歯科診療などでも指導を受けることができます。歯科衛生士の訪問指導を定期的に受けている方で、心配なことがある場合は、令和4年の4月よりオンラインで歯科医師の診察を受けることができるようにもなりました。
オンラインによる歯科医師の診察というのは言葉の通り、気になること・心配なところを患者さん側にいる歯科衛生士さんとともに画面を通して歯科医師の診察を受け、その次に対面で診察を受けるものになります。担当の歯科衛生士さんにご相談ください。
是非、口腔ケアで咽頭(のど)の感覚を改善させ、「嚥下機能」を改善しましょう!